断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2020年7月の読了 空調服を着て読書をしていた夏

今年の現場は空調服で快適に過ごすぜ!

。。。のはずだったのにコロナ第二波。せっかくの強そうな見てくれを披露する機会もない。クーラーのない自室で冷を補うためのツールと化していた。無理に通勤で着て行ってもファンを回せば怒られそうで。電車の中ではただの断熱服と化す。職場で付けると会話ができない場合もある。

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でも空調服の中ではいちばんカッコいいと思ってるので、そっとリンクを置いておく。 

ベスト単品とセット。



 

 

 

空調服もあまり必要なかった涼しい7月。

読書ははかどって17冊にもなっていた。

超高速暗記術とナイルパーチの女子会は特にお気に入り。その後何度も読み返している。

 

 

店長がバカすぎて/里見和真

どこまでも読者目線。働くみんながもがく、その目線にどんどん引き込まれる。なーんだ真相なんて分かっちゃってるもんね、と安定した神目線をガツンとやられる瞬間のにやけ。「不満があるなら、自分の環境を変える努力をしてから」話ごとのキラーワードも待っている。

流浪の月/凪良ゆう

渦巻く心の内。これは時空を忘我させる。男女が求めるものは相手の独占や庇護じゃない。なぜ許可を得なくちゃいけない?みんな一体何に赦されたいの?自分の伴侶を見つめて心が揺れる。果ては誰しもあるだろう赦しの記憶を掘り起こしてくる。それは、誰もが逃れられないはず。

感情力/ルロール&アンドレ

感情力を高めるためには感情の知識ーーつまり自分の感情に気付く符号を得る必要がある。そして相手の気持ちに共感する観察力と相手の気持ちを言葉にして確認できれば自在になる。図らずも、自分の本読みの目的に出会うとは。
歳とれば怒りと羨望は整理できるよ。

稚児桜/澤田瞳子

ベースとなった能楽は1つも知らないけど平安の短編を楽しめた。日本史実をもとにものがたりを編み込むスタイルは健在。男色や遊女、鍛冶屋、蘇我氏など、スポットを当てることの無い主役たちを選んでいるところも珍しい。一癖ある感じが心を軽くする。

ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治

気持ちの問題ではない。ボディを問題視する一貫性。キャッチーな事実を突きつけ納得はするけど、自分事でできることは限られてることを実感。我が子の兆候にビクついて、クラスの5人から遠ざかる。あとは運。そういや中学の年少送りは話が通じなかった。

あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。/才羽楽

記憶の中の風景がふとした言葉で息を吹き返す。乾いた空気の味や砂時計の落ちる虚しさ。言葉の選び方がやはり好き。洞窟を突き進む謎解きに歓喜し、めくるめく依頼解決を共に過ごし、どこまでも包み込む優しさ。最後の1行が色を成す優しさ。

劣化するオッサン社会の処方箋/山口周

何を。当時48の筆者が自分の上の世代を劣化したオッサンとして自分より下の世代に処方箋を書いたもの。考察や引用は同意するが、外資で外から分析しかやってないなというのがよく分かる。経営者宛て。権力や出世や果実ばかりが尺度じゃないと思うんだけどな

超高速暗記術/鬼頭政人

もう3回読んでる。勉強する人は是非とも。「何度も通読」はムダ。
・参考書をボロボロにするのもノートを綺麗に取るのも無駄。
・自分が読めれば書きなぐりで十分。憶えてない部分だけ書き出して持ち歩けば合理的。
・○○するまでトイレに行かない。細やかすぎるご褒美

読書という荒野/見城徹

自己検証、自己嫌悪、自己否定。自分がどう感じるかだけ。読書で学べる事に比べたら一人の人間が一生で経験することなど高が知れている。認識者から実践者へ。夢や野心を語るな。自分の信条の言語化。彼等が惹き付けられたように、私も繰り返し彼の生き方に触れたくなる。

少年と犬/馳星周

2010年代の孤独や閉塞を犬を媒介にして風刺する。どれも痛々しい。でも、わかりやすい救済は与えない。さりとてジワジワとは抉らない。シャッターの閉まるスピードは恐ろしく速い。特に自己実現を捨てきれず登山スキーとトレイルに明け暮れる男が自分とかぶるようで痛々しい。

1日10分のしあわせ/朝井リョウ

遠い日の一点。そこから分岐する一点に想いの焦点を当てるような珠玉の短編。終わりでもないのに切なくなってくる。朝井リョウの「清水課長の二重線」角田光代の「鍋セット」が好き。一遍10分。感想文の書きがいのある文学的な課題図書たち。

むかしむかしあるところに死体がありました/青柳碧人

日本昔ばなしをミステリーにしてしまう。妄想が妄想を呼び。電車の旅で退屈しないかも。語り口は魅力的。それでも、個人的にはもっと遊んでしまっても構わなかった。かつて所ジョージがアリとキリギリスで遊び散らかしたように。知ってる?

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています/小林昌平

藁にもすがるタイトル。納得の集合知があり納得が得られるものの、するする頭から忘れられていってしまうのはなぜか。その悩みが私にとって重要じゃないってことかな。色々ある中で道元の「一意専心」は胸に深く刻まれるものがあります。

ナイルパーチの女子会/柚木麻子

歳と共に友達は疎遠になる。「生涯の友人。週末の仲間が宝物」それが嫌いだった。私達は水槽で一人相撲をとってる。競争させるものたちに立ち向かうために共感が欲しくてたまらない。それでも、一過性の中に共通の1点さえあれば…。着地点を強く肯定する。

コロナ後の世界/知性の6人

合理的な認識を説くピンカー。GAFAの短期的動静を冷静に分析するギャロウェイ。資金の流れを示唆するクルーグマン。この3人の言葉は必読に値する。

悲観主義ニヒリズムを産む。とにかく落ち着け。
GAFAは他意なく虚報で世界を誘導する。

黄砂の籠城(上/松岡圭祐

1900年北京。1キロ四方の街に列強公使館ひしめく世界の縮図の最前線があった。街は義和団に包囲される。
歴史ものにありがちな解説を目立たせず、櫻井伍長の見聞きした世界に限定されるがゆえか、ぐいぐいと没入させてくる。
これは実在した者たちの話である。

黄砂の籠城(下/松岡圭祐

乾坤一擲、真剣一騎打。うち震える活劇に一気読みは間違いない。一方、日本人の美徳が強調されつつ冒頭ではプロパガンダと揶揄する。でも、事実はどうあれ史実や多数の手記が物語るような120年前の振る舞いを今の自分たち子孫はどうだ?自らを省みろと警鐘を促される。