断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2017年12月の読了 大団円!

裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII 石田衣良

物事を切り取る言葉が冴え渡る。炎上を「俺たちは正義の力を行使するのに酔うようになった」と表し、中年やシングルマザーの問題をその言葉で切り取る。今作からかな?弱者を助く勧善懲悪から、依頼者を奮い起たせるサポートに徹している。そこが好き。

校閲ガール 宮木あや子

ノリが良くて暴れまわる。ドラマ初回だけ見たけど小説の方が良い感じ。不安や対人関係の悩みなんて「馬鹿なの?」と一蹴して吹き飛ばす芯のある女子。黄昏れたり哀愁する自分が馬鹿に思える。すごい元気をもらえる。最後のまとめも巧いんだもの。で、早速、次巻を買った。

校閲ガール (角川文庫)

校閲ガール (角川文庫)

 

([と]1-2)あん (ポプラ文庫) ドリアン助川

中年で迷ったら読めとのフレコミ本。製餡が人を結び、彼らの存在は私達の視点で浮かび上がってくる。叫ぶ詩人が書いた「まさに叫びたかった詩」がわかったとき、一気に走馬燈が廻り、じわり、自分の見聞きする世界の捉え方が変わる、とさえ信じられるようになる。

 

 

うわぁぁぁぁ…ホントに載ってた! コンビニ人間の読了ツイ。 4行も〜ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧* なだではなく、読メ垢の風速緋白の名義ですが私です。 ダ・ヴィンチ1月号p194より

桜風堂ものがたり 村山早紀

本と人が「命を生きること」を伝え合う。語り視点に応じて物語のスピードが緩急入り交じり、書店員視点が実にドラマチックな躍動感を生む。本を売る。皆で恩返しする。本屋という場所に自分は無知過ぎた。本屋でこんなにも胸熱い歓喜と幸福感に満たされるのは快感です。

劇場 又吉直樹

嫉妬まみれの思いを隠すどころか客観視しながら演劇のように幕間を端折って展開していく。批判させない防衛線が、最低男による緻密で冷静な自己分析という形で張られている。又吉初読みなのだけど「2冊目が怖かった」TV談の通り、焦りや顕示欲が自分に伝染するように感じられる。

反応しない練習 草薙龍瞬

無宗派僧侶が書く哲学。珠玉の言葉は手元で何度でも読みたい。原始仏教は悩みに対する超合理思考であるとは知らなんだ。よく私が読了趣旨にする「自分の特別な何か」の理屈と解法がある。集中や充実感という快を大切にすること、承認欲に支配されないことが見えてくる。

 

子どもたちは夜と遊ぶ上 辻村深月

留学を賭けた論文選考を、匿名論文が略奪する。匿名のiアイは誰か?二重人格を含め全ての人物が疑わしい。誰であって欲しくもない願いを抱く。えげつなく容赦のない筋書き。生半可な黒じゃなく微細に至るまで徹底的な残酷さ。むしろその黒光りに頁が止まらない。

子どもたちは夜と遊ぶ下 辻村深月

殺人ゲームを中核に、iの謎解きをする一方、世界と決別するθを追う。最悪の方向にしか進まない筋書きなのに、遠ざける事ができない。まさにejθ。近付いたり離れたりする人間の距離感が最後に解かれ、過激な物語は暗喩に昇華する。なんなの?この後味の良さ。

子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)

子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)

 
子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

 

何様 朝井リョウ

「妹の声を生む塊を落としかけた」等の無機比喩で極めて冷静に内面を吐露する何者節。皆の内面がこんな理知だと恐ろしい。とりわけ標題になった最後の短編が響いた。「誠実への一歩目になる本気の一秒」が熱い。社会に出た誰しもが腹を括る瞬間がそこにある。現実はこの連続だ。

ソードアート・オンライン20 ムーン・クレイドル (電撃文庫) 川原礫

どう仕舞いたかったか、執筆に到る動機づけは何だろう。あとがきから読めば感想は変わったかも。設定の綿密さでなく、純粋に初期のような創作を世に問うシリーズが私は好き。設定解説は聞けるけど、憑依する感情が、見つからない。残るものが、掬えない。

機械仕掛けの選択 サクラダリセット3 (角川文庫) 河野裕

何気ない会話の裏にあった菫の胸の内や、ケイの行動原則を知るプロローグの回。意味深い例え話が出てくる度、じっくりと行きつ戻りつ反芻して、心は何処かに旅してしまう。アンドロイドの問いかけを経てはじめて、登場人物らの感情の表裏が見えてきた。本編が始まる。

さよならがまだ喉につかえていた サクラダリセット4 (角川文庫) 河野裕

本編かと思ったら断片集。そんな大事な伏線回収ではないけど、とても温かい気持ちで納得感を味わうことができた。特別収録のホワイトパズルが秀作すぎ。貪る様に文字を追いかけた。時間制限のある恋愛ものって、こちらの感情も先行して記憶を刺激してくる。

片手の楽園 サクラダリセット5 (角川文庫) 河野裕

能力x策略の展開が薄くて、幸せを求めるテーマ作は巧く感想を紡げない。とにかくリセットで泡となる春埼の感情が儚い。なんで本人の意向を無視して夢模擬するのか、春埼のために?菫をどうにか考えるばかりか。最後は想いを無かったことにしない結末であってほしい。

少年と少女と、 サクラダリセット6 (角川文庫) 河野裕

他人の幸せを願う深い想い。想い人の全ての幸せを守るためなんて…恋とか愛とかの言葉にならないこんな想いがあるのか。会話一つ比喩一つ全部無意味なんかじゃなかった。受けた衝動に、暫く頁が止まった。想いの行き先は何処へ。全てを担った彼に身震いが止まらない。

少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7 (角川文庫) 河野裕

伏線を巻き込む暴風のような展開。あらゆる理想や恋心を全部ぶち込んでるのにグイグイ読ませる。私に刺さった理想は、ケイが見つけた「幸せだけが生まれる場所」。誰かの幸せを願うことは自分を幸せにする。誰かに見られることで自分を見る。忘れていたかもしれない。

凍える牙 乃南アサ

今更ながらの、21年前の直木賞で初読み作家。男女ペアの刑事もの。テンポよく徐々に信頼関係が出来ていく。元白バイ隊員の見せ場に、こちらも走り出したくなる爽快感が味わえた。この爽快が味わえるなら…と、シリーズを制覇してしまうかも。そのくらい癇に障る所が全く無い。

凍える牙 (新潮文庫)

凍える牙 (新潮文庫)

 

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫) 辻村深月

最後までドキドキしてたまらなかった。すべては自分のためなのか、他人のためなのか。行動や感情が湧き出す源泉が整理される講義の度にこちらが逃げ出したくなる。最後まで連れていってくれたぼくの心の内に思いを馳せて、安堵の心地良さに満たされる。 

2017年11月の読了 初読み作家をむさぼる

正解するマド 乙野四方字

原作アニメも野崎まども知らないのに窓の表紙に手を出した。合わせ鏡の白い宇宙だった。SFメタってこういう面白いのもあるんだと唖然。読めばわかるけど、やっぱり破り捨てないといけないかと振り返ってしまう。作者がリスペクトする野崎まどの本を読みたくなった。

ちなみに。。。

野崎まどを読む順番。この小説は、これ単体で読むよりもふさわしい。

  1. アムリタ
  2. 舞面真面とお面の女
  3. 死なない生徒殺人事件
  4. 小説家の作り方
  5. パーフェクトフレンド
正解するマド (ハヤカワ文庫JA)
 

幸福な生活 百田尚樹

ラスト一行であっと言わせるショートショート構成作家らしい小話の連続。乗り物の待ち合いとかにちょうど良いかも。昔はこういう文庫ばっかりだったような錯覚?怖い女の話ばかりなのが個人的にちょっと嫌でした。またかよ、みたいな。好みの問題だけど。

幸福な生活 (祥伝社文庫)

幸福な生活 (祥伝社文庫)

 

和菓子のアンソロジー (光文社文庫) 坂木司ほか

やっぱり食と記憶の結びつきは強い。短編で作者がバラバラにも関わらず、話がいつまでも頭から離れていかない。中華菓子、どら焼き、葛、松露、淡雪羹、夜船、練切り、遠山餅、黄身時雨、七夕。文字で残しておくだけでストーリーは甘く蘇ります。 

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コンビニ人間 村田沙耶香

社会や一般的というものの残酷さ。自分であることの存在意義。コンビニという完全性。短い芥川賞の範囲で全部表す。誰しも抱いたはずの「異物にならないようちゃんと生きなきゃ」がジクジクと抉られて…。必死に生きるすべての人間に問いかける。唸るしかない。

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ソードアート・オンライン19 川原礫

前回読了から1週間…超細切れで一冊読み終わった。感想、書きづらいなー…。後日談のプロローグ。数あるSAOシリーズでもこの巻の意義がまだ呑み込めない。次巻ですっきりさせてほしい。

スーパーカブ (角川スニーカー文庫) トネ・コーケン

孤児になった女子高生。奨学金で細ボソと生きる中、通学の足でカブに出会う。読めばカブが欲しくなる麻薬のような本。気軽に持てるカブの良さが、淡々とした日誌体から静かに、控えめに出ている。「ずっと持ち続ける!」私もそう思ってたのになんで手放したかなぁ。。。

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スマートノート 岡田斗司夫

「B5ノートを見開き、右から書け」ふざけんなと思った私が、今日も脳内ループを素直にノートに吐き出す始末。強い主体性こそがこの本の主旨。衝撃的な一説「現実世界では只の人。電脳世界は自由をくれるけど均質な無価値さを思い知らせる。ノートにあるのが脳内世界」

あなたを天才にするスマートノート・電子版プラス

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コーヒーが冷めないうちに 川口俊和

コーヒーが温かい間だけ過去に帰れる。原則は過去は変えられない。でも、自分の振りかえり次第で心や未来や捉え方は変えられる。短い会話のぶっきらぼうさが中盤から深みを増す。脚本家らしく多くを語らず。コーヒーを飲んだ後の一服感がふんわり残る

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みかづき 森絵都

理想教育を目指す大島一族。この巨編には人生の数多の煌めきがある。理想に見切りをつけることも、足掻くことも、目的を見失うことも、凪いでいくことも。最後に月が満ちるその時まで、欠けている自覚を持って、私も自分の道を満ちよう。不条理に抗う力は私にも授けられたはず…!

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流 東山彰良

台湾で生まれ育った国民党戦犯の孫。少年期から青年期に流れていった思い出の断片。それらの物語からキャラが飛び出してくる躍動感。受け取ったメッセージはよく分からない。だけど、皆で輪になって話を聴き入りたくなる。噺家の話術のように惹き込まれて、楽しい時間をもらった。

流 (講談社文庫)

流 (講談社文庫)

 

クローバーナイト 辻村深月

保活、お受験、誕生会、子育てエッセイの様相が徐々に胸苦しさに変わる。やはり辻村深月。子育ての今だからこそ、今の気持ちを未来の自分へ遺すかのよう。最終話に出てくる際限なく膨らむ親からの干渉というのが他人事ではない。育てさせてもらっている、お忘れなく。f:id:marsaw:20180330002727p:plain

パーマネント神喜劇 万城目学

トヨトミ以来何年ぶりだろう?万城目さん。長編ではなく、雑誌掲載(しかも2010と2016年)の短編でした。出版の間も空いていたから薄々予想はしていたけど…出版社さんの編纂の意図がよくわかんない。満を持して書いたもの、が読みたい。

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ヴァン・ショーをあなたに 近藤史恵

シリーズ第二弾。名物ホットワインレシピの由来が題名です。店の中での謎解きに留まらず、パン屋、仏の修行時代など、ビストロの外を舞台にした「動」にするだけでこんなに開放感が出るとは。別の作品みたいに楽しい。近藤さんは海外での物語が秀逸だと思う。

 

祝言島 真梨幸子

初読み。初嫌ミス。揺られるままに読み進め、グチャグチャな糸を解き解す作業を初めて体験。読後、話の構造設計に深いため息が出てくる。最後まで筋を読ませないあまり、感情が汲み取れない異様な人物ばかりになったところが、物語というよりも建築作品たる所以でなかろうか。

京都あやかし絵師の癒し帖 (スターツ出版文庫) 八谷紬

会話の間や続きから気持ちを察する登場人物の掛け合いに、自分の心まで慈愛に満ちてくる。設定自体はいろんな他作品の要素を煮込んでるように見えるけど、オリジナルに昇華してる。思い遣りとは少し違う…相手を受け容れる広さが清々しくて気持ちがいい。

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2017年10月の読了 良本のお祭り騒ぎ

スターティング・オーヴァー 三秋縋

私が頻繁に妄想し書いてみたいと思ってた"1回目を失いたくない"タイムリープ。絶望感に胸を締め付けられ、対人関係の歪みを抱え込んだままでも…これこそがあるべき道程だったと得心。他の作者とは違う捻くれ感がクセになる。深みのある素晴らしい一冊。

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スフィアの死天使: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex) 知念実希人

始まりの物語。創作の土台に息吹を吹き込む執筆は幸せそのものではなかろうか。気持ちよく読み進めた。推理カルテはワクワクするのに比べ、殺人が絡む事件カルテはスリリング。トリックも全然わからず。作品の拡がりが果てしない。

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ボトルネック 米澤穂信

初読み作者。存在理由の苦悩を年齢で溶かすことなく満を持して書き上げた。青春の苦悩がどうこうより、世界の狭さや考え方の狭さに苦しさを覚え、閉塞感を持った高校生が大人びた筆で書いた若者らしい自己顕示を前面に感じる。もう目線を並べられない自分を再認識。

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

 

クジラの彼 (角川文庫) 有川浩

決め台詞で見得を切られるたび湧き上がる高揚感。台詞にヤラれっ放し。"ロールアウト"の「あなたが戦うと言ってるのにこっちが日和れない」が一番好き。ベタ甘ラブロマは幾つになっても胸の奥が暖まる。恋愛だけは憧れて自分に映すことなく、素直に他人のことに高揚する。

天久鷹央の推理カルテIV: 悲恋のシンドローム (新潮文庫nex) 知念実希人

心と密接に繋がった病症が引き起こした3話。小鳥にしか「解決」できないゆったりした事件でした。「本質は意志と行動でつくられる」って一文を目にした時、一つ一つの言葉が現す本質の大切さを今更ながら感じてニヤリとしてしまった。

自分を操る超集中力 Daigo

沢山の本を読んできたのが伺える。あちこちの知識をまとめて解りやすくしていて、多分否定的な意見が出ないと思う。個人的には「机に鏡を置け。自己認識力を高める」てのを真似したい。どんな顔で仕事や勉強してるのか興味がありません?

自分を操る超集中力

自分を操る超集中力

 

天久鷹央の推理カルテV: 神秘のセラピスト (新潮文庫nex) 知念実希人

気のせいじゃ?と一蹴される思い込みの裏にあるすれ違いを暴く。ゾンビ化、若返り、聖痕、とネタは尽きることを知らない。鷹央が目に見えて成長していき、二人のコンビも終わりが近いのかと予感してきた。なんでドラマ化しないのかな?

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UFOがくれた夏 川口雅幸

タイトルから想像できない予測不能な展開。王道ネタがメガ盛りに盛ってあり、既に分厚いけどもっと頁数があってもいい位。むしろ展開の飛びが不明瞭な所があって、深読み解釈をしてしまう。確かに、粗筋は書けない。ラストと解説読んで、書きたかった事に苦笑い。

UFOがくれた夏

UFOがくれた夏

 

冷たい校舎の時は止まる 上 辻村深月

ペルソナ1の雪の女王篇みたいな舞台。重なる8人の罪悪感。人物像がなかなか認識できなかったけど、各人の心の深淵を覗くなかでより深く身近に感じ、自分に符合する人が必ず見つかる気がします。結末が想像できない。

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冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 

冷たい校舎の時は止まる 下 辻村深月

心理描写が素晴しい。

自分以外の人物の心理をなぜ我が事の様に書けるのか。自分の意識と関係ない所で支えたり傷つけたり、流されていく自分に価値がないと思ったり、8人の主人公が心と向き合って訪れる読後感。キングやペルソナ色が強いと思ったらやはり。

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冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 

 

西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII 石田衣良

クリスマスや春、夏の終り。事件後の池袋のひとコマが好き。社会事件を扱うルポ的要素が強くて、相手を嵌める仕掛けの痛快さが衰えてきてるかも。「特別な何かを求めるな」と事件より自分の生き方への文章が増えてきた。衰えは、青年期が終わろうとしてるのからか。

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幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex) 知念実希人

密室殺人は透明人間の仕業?人物は限られてるから、犯人よりも謎解きに頭を悩ませた。読んでいた自分の体調のせいもありましょうが、力技で通した感があるかな。緊迫した場面なのに疾走感を感じられず。やっぱり主役が現場に来れないと…です。

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短編少年 伊坂幸太郎ほか

 「彼らはまだ2年間のチャンスが残っている。それを無限だと思っているに違いなかった」柳広司の一節にとても共感。そう、あの時期には永遠があるのかも。でも、少年の整理されていない感情を言葉を駆使するのでなく、精一杯そのままに伝えていた小川糸さんの「僕の太陽」が一番好き。

天使の囀り 貴志祐介

新世界より」を思い出させる現代のバイオホラー。眉間にシワを浮かべながら頁をめくる手は止まりません。無機と有機の距離感を一定に保ちながら本筋のプロットを置いていく。元凶が無機過ぎるのが救いがなくて好き。解説の瀬名さんが書くとおり最高のエンタテイメント。 

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

 

ツバキ文具店 小川糸

始めから終りまで顔にある全てが横に伸びっぱなし。ニコニコ読める本書は屋外では読めないかも。言葉と想いの代筆屋。温かくて瑞々しい描写と、男爵、パンティーなどコミカルな人物呼称。「後悔しないなんてありえない」顔を上げ前を向く話に弱い。図書館本→買いです。

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この胸に深々と突き刺さる矢を抜け上 白石一文

週刊誌業界の日々に対する胃がん編集長の胸の内を語りながら、数多の引用や論評を織り交ぜる形式。台詞も思索も解説もとにかく長いが一挙両得とも感じる。29章「どうせ怖がるしかないなら死ぬ直前に精一杯怖がればいいじゃない」ここ好き。

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)

 

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け下 白石一文

1/3以上が引用。それを何十行もの台詞で語る。普通に考えたらありえない。でも酷評したくはない。作者は悶々と解決しきらない疑問を必死に詰め込んでいて、飾らない真っ直ぐさがあるからではなかろうか。本を沢山読んだ果てに訪れるのかも 

夜行 森見登美彦

オモチロイ大学生が鞍馬山で運命の想い人と再会?かと思ってた。どっこい怪談と森見並行世界が入り交じる。読み手ごとに夜の隙間を埋める闇を見出す。闇に抱かれる事は生きるそのものの様な彼の考え方の一端を感じた。ガガーリンが深い闇を見て蒼さを実感した下りが心に残る。

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サロメ 原田マハ

ババン!段落毎に音がする、文字運びが戯曲の連続。韻のとり方が少しダークタワーやVTRに似てるかも。実在のピアズリー姉弟をもとに作り上げた魔性の話。どうやって幕を降ろすのか。耳元にカーテンコールが鳴り響いて、溜息が出る御芝居でした。マハさんの傾向掴めてきた。

サロメ

サロメ

 

よるのばけもの 住野よる

中二のときマイノリティらを無視する同じ現象があった事を回顧した。主人公の葛藤を読んで胸の動悸が止まらない。確かに大人になると皆の仲間意識の外にズレることは厭わなくなる。でも理解不能なものを無視する本質は変わらない。彼の作品で一番頭に残る。只々深い。

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時をかけるゆとり (文春文庫) 朝井リョウ

学生のゲラゲラ笑いが詰まってる。私も構内深夜自転車レースとか馬鹿したっけ。恥ずかしい記録を存分に楽しんだ。中でも自分ツッコミで照れ隠しながらの直木賞受賞エッセイは圧巻です。「文章があれば自分とちがわない。あがりなんてどこにもない」よくぞ吼えた。

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