断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2017年10月の読了 良本のお祭り騒ぎ

スターティング・オーヴァー 三秋縋

私が頻繁に妄想し書いてみたいと思ってた"1回目を失いたくない"タイムリープ。絶望感に胸を締め付けられ、対人関係の歪みを抱え込んだままでも…これこそがあるべき道程だったと得心。他の作者とは違う捻くれ感がクセになる。深みのある素晴らしい一冊。

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スフィアの死天使: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex) 知念実希人

始まりの物語。創作の土台に息吹を吹き込む執筆は幸せそのものではなかろうか。気持ちよく読み進めた。推理カルテはワクワクするのに比べ、殺人が絡む事件カルテはスリリング。トリックも全然わからず。作品の拡がりが果てしない。

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ボトルネック 米澤穂信

初読み作者。存在理由の苦悩を年齢で溶かすことなく満を持して書き上げた。青春の苦悩がどうこうより、世界の狭さや考え方の狭さに苦しさを覚え、閉塞感を持った高校生が大人びた筆で書いた若者らしい自己顕示を前面に感じる。もう目線を並べられない自分を再認識。

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

 

クジラの彼 (角川文庫) 有川浩

決め台詞で見得を切られるたび湧き上がる高揚感。台詞にヤラれっ放し。"ロールアウト"の「あなたが戦うと言ってるのにこっちが日和れない」が一番好き。ベタ甘ラブロマは幾つになっても胸の奥が暖まる。恋愛だけは憧れて自分に映すことなく、素直に他人のことに高揚する。

天久鷹央の推理カルテIV: 悲恋のシンドローム (新潮文庫nex) 知念実希人

心と密接に繋がった病症が引き起こした3話。小鳥にしか「解決」できないゆったりした事件でした。「本質は意志と行動でつくられる」って一文を目にした時、一つ一つの言葉が現す本質の大切さを今更ながら感じてニヤリとしてしまった。

自分を操る超集中力 Daigo

沢山の本を読んできたのが伺える。あちこちの知識をまとめて解りやすくしていて、多分否定的な意見が出ないと思う。個人的には「机に鏡を置け。自己認識力を高める」てのを真似したい。どんな顔で仕事や勉強してるのか興味がありません?

自分を操る超集中力

自分を操る超集中力

 

天久鷹央の推理カルテV: 神秘のセラピスト (新潮文庫nex) 知念実希人

気のせいじゃ?と一蹴される思い込みの裏にあるすれ違いを暴く。ゾンビ化、若返り、聖痕、とネタは尽きることを知らない。鷹央が目に見えて成長していき、二人のコンビも終わりが近いのかと予感してきた。なんでドラマ化しないのかな?

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UFOがくれた夏 川口雅幸

タイトルから想像できない予測不能な展開。王道ネタがメガ盛りに盛ってあり、既に分厚いけどもっと頁数があってもいい位。むしろ展開の飛びが不明瞭な所があって、深読み解釈をしてしまう。確かに、粗筋は書けない。ラストと解説読んで、書きたかった事に苦笑い。

UFOがくれた夏

UFOがくれた夏

 

冷たい校舎の時は止まる 上 辻村深月

ペルソナ1の雪の女王篇みたいな舞台。重なる8人の罪悪感。人物像がなかなか認識できなかったけど、各人の心の深淵を覗くなかでより深く身近に感じ、自分に符合する人が必ず見つかる気がします。結末が想像できない。

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冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 

冷たい校舎の時は止まる 下 辻村深月

心理描写が素晴しい。

自分以外の人物の心理をなぜ我が事の様に書けるのか。自分の意識と関係ない所で支えたり傷つけたり、流されていく自分に価値がないと思ったり、8人の主人公が心と向き合って訪れる読後感。キングやペルソナ色が強いと思ったらやはり。

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冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 

 

西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII 石田衣良

クリスマスや春、夏の終り。事件後の池袋のひとコマが好き。社会事件を扱うルポ的要素が強くて、相手を嵌める仕掛けの痛快さが衰えてきてるかも。「特別な何かを求めるな」と事件より自分の生き方への文章が増えてきた。衰えは、青年期が終わろうとしてるのからか。

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幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex) 知念実希人

密室殺人は透明人間の仕業?人物は限られてるから、犯人よりも謎解きに頭を悩ませた。読んでいた自分の体調のせいもありましょうが、力技で通した感があるかな。緊迫した場面なのに疾走感を感じられず。やっぱり主役が現場に来れないと…です。

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短編少年 伊坂幸太郎ほか

 「彼らはまだ2年間のチャンスが残っている。それを無限だと思っているに違いなかった」柳広司の一節にとても共感。そう、あの時期には永遠があるのかも。でも、少年の整理されていない感情を言葉を駆使するのでなく、精一杯そのままに伝えていた小川糸さんの「僕の太陽」が一番好き。

天使の囀り 貴志祐介

新世界より」を思い出させる現代のバイオホラー。眉間にシワを浮かべながら頁をめくる手は止まりません。無機と有機の距離感を一定に保ちながら本筋のプロットを置いていく。元凶が無機過ぎるのが救いがなくて好き。解説の瀬名さんが書くとおり最高のエンタテイメント。 

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

 

ツバキ文具店 小川糸

始めから終りまで顔にある全てが横に伸びっぱなし。ニコニコ読める本書は屋外では読めないかも。言葉と想いの代筆屋。温かくて瑞々しい描写と、男爵、パンティーなどコミカルな人物呼称。「後悔しないなんてありえない」顔を上げ前を向く話に弱い。図書館本→買いです。

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この胸に深々と突き刺さる矢を抜け上 白石一文

週刊誌業界の日々に対する胃がん編集長の胸の内を語りながら、数多の引用や論評を織り交ぜる形式。台詞も思索も解説もとにかく長いが一挙両得とも感じる。29章「どうせ怖がるしかないなら死ぬ直前に精一杯怖がればいいじゃない」ここ好き。

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)

 

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け下 白石一文

1/3以上が引用。それを何十行もの台詞で語る。普通に考えたらありえない。でも酷評したくはない。作者は悶々と解決しきらない疑問を必死に詰め込んでいて、飾らない真っ直ぐさがあるからではなかろうか。本を沢山読んだ果てに訪れるのかも 

夜行 森見登美彦

オモチロイ大学生が鞍馬山で運命の想い人と再会?かと思ってた。どっこい怪談と森見並行世界が入り交じる。読み手ごとに夜の隙間を埋める闇を見出す。闇に抱かれる事は生きるそのものの様な彼の考え方の一端を感じた。ガガーリンが深い闇を見て蒼さを実感した下りが心に残る。

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サロメ 原田マハ

ババン!段落毎に音がする、文字運びが戯曲の連続。韻のとり方が少しダークタワーやVTRに似てるかも。実在のピアズリー姉弟をもとに作り上げた魔性の話。どうやって幕を降ろすのか。耳元にカーテンコールが鳴り響いて、溜息が出る御芝居でした。マハさんの傾向掴めてきた。

サロメ

サロメ

 

よるのばけもの 住野よる

中二のときマイノリティらを無視する同じ現象があった事を回顧した。主人公の葛藤を読んで胸の動悸が止まらない。確かに大人になると皆の仲間意識の外にズレることは厭わなくなる。でも理解不能なものを無視する本質は変わらない。彼の作品で一番頭に残る。只々深い。

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時をかけるゆとり (文春文庫) 朝井リョウ

学生のゲラゲラ笑いが詰まってる。私も構内深夜自転車レースとか馬鹿したっけ。恥ずかしい記録を存分に楽しんだ。中でも自分ツッコミで照れ隠しながらの直木賞受賞エッセイは圧巻です。「文章があれば自分とちがわない。あがりなんてどこにもない」よくぞ吼えた。

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