断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2018年4月の読了 熱い40代の小説たち

今月もこんにちは

振り返ると40代の主人公たちが多いレパートリーです

図書館本は少なく、自分の本棚から積読解消です

 

圧倒的に心に残ったのは「暴力の人類史」

タイトルから本を遠ざけてしまうかもしれませんが

自分の衝動の根源を突き付ける…私にとっては物事にやさしくなれる本です

上巻は借りたものの下巻は買おうと思ってモジモジしてます

 

 

草原の椅子(上) 宮本輝

40代、生きるとは何?と思ったら読むべき本。そう聞いて手に入れた。ゆったりと流れる独特の日常描写が全然飽きない。この世代以降から現実視する厭世観を克明に捉えていて、頷くばかり。このまま済し崩し的に生きていいのか?充分生きたと思える修羅場を味わったか?

草原の椅子(下) 宮本輝

取引先の社長と営業部長。親友の契りを結んだ50男2人が大人たらんと生きる。著者の持論や理想の大人像が箴言とともに書かれていて、新聞連載らしく展開をぶん投げるけれど、反発も飽きも来ない。むしろ愛着が湧く。ラフマニノフ聴きながら読みたい、染み込むような物語。

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行かずに死ねるか! 石田ゆうすけ

95〜01年の世界一周旅行記。断片化した7年が文庫に収まる。旅の目的は平穏な運命に逆らうこと。とりわけ、ナイロビから喜望峰まで行きづりチャリ団4人で4000kmを走る眩しい若い馬鹿さが奇跡的。でもね。どう生きても後悔の大小なんてないと思うの。

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神々の山嶺(上) 夢枕獏

エベレスト初登頂者の歴史が1台のカメラで覆るかもしれない。ミステリーを孕みながら羽生の乱生を辿る。夢を捨て切れないのか、自己顕示が理由なのか自分も分からなくなる。この迫り来る恐ろしさはサスペンスでは味わえない。山嶺という迫力がのしかかってくる。

神々の山嶺(下) 夢枕獏

エベレスト単独に同行してる錯覚。匂いや音までも感じられる文章が心を捉えてやまない。生きていくことと山を登ることの目的がダブる。自分に照らして辿り着く一文「とにかく俺にとっては最初だってこと」。射程距離なんて無いんだな。迷いをほどいてくれた渾身の作品!

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ふたご 藤崎彩織

自伝をモチーフにした、セカオワらしからぬ静寂と無音が漂う文字運び。色が、どうしても感じられない。共依存?…いや、自己肯定を求めて止まない自分のことを告白する、彼へ宛てた本かもしれない。もしそうなら、ファン心理を満たす後半は本当に彼女が書きたかったものかな。

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火定 澤田瞳子

我が身の為だけに用いれば人の命ほど儚くむなしいものはない。自分のやりたいことをやって幸せという納得したはずの割り切りが、中世の死生観に揺らがされ胸が熱くなる。人に影響を与えることを柱に。我が身の振り方に自省する。ヒーローではなく火定入滅という流れが清々しい。

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超一流の雑談力/安田正

「一文は短く。リズミカルに。音程はファかソ」。吸収できた頷き箇所はこんなとこかな。後半は具体性が失われていく。「苦手な人とは?」→「向き合うこと」とかギャグ。

それよりも。この義母からの品。高松の栗林公園の入場券が挟まれていて、ミステリーのような思い。

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氷菓 米澤穂信

沢山のブラインド空間が、一瞬の閃きで種が明かされる。映画にもアニメにもなったけど小説からこんにちは。ユルい雰囲気と、この年代がのめり込む謎が何ということはなくて(むしろ大人目線では無興味)、ああ、それが学生時代だったなと、こういう形の構成が斬新に感じた。

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人間は9タイプ 坪田信貴

人間カタログ。良くわかるほどに納得出来る。統率者だった私。「短期的な企画を先導するのは得意。でも長期的権力を握ると人が離れていく」…そして統率者だけ「邪悪サイド」という注意コラムがあって、思い当たるだけにゲンナリ。読むと凹む。でも天狗になる時の薬。

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彼方の友へ 伊吹有喜

躍動する雑誌作りに随所で緩む口元。エンドロールたる出典を見つめて友への想いで胸いっぱいになる。丁寧に丁寧に、波津子がそうしたように、取材を重ねて想像し現代に最上を届けようとした著者。実在の「少女の友」のリレーは時をかける。実業之日本社120周年を飾る最上。

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暴力の人類史(上) スティーブン・ピンカー

それは「暴力」というより「他者への働きかけ方」の変遷。かつてありえないほどに暴力は減少している。略奪、防衛、報復。あらゆる暴力の源泉と科学論証を突きつけられ、今ある自分の働きかけ方を省みる。環境1つで全て裏返る不安を感じつつ、これからの人間性の向かう先は?下巻へ

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インフルエンス 近藤史恵

近藤さんはこういう…やってしまったことを認識する冷静さや、長年じっくりと自分を見つめるような主人公の感性を、負の方向のストーリーに持っていくと、行き着く先が気になりすぎて目が離せなくなる。何が出るか怖いけど、卒アルを開いて検索したくなる。f:id:marsaw:20180510004425p:plain