断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2018年2月の読了 今月のテーマは女なの?

山女日記  湊かなえ

安宿で人が行き交うように、山女たちの織りなす刹那が浮かんでは足早に通り過ぎていく。ぬくぬくじゃないけど、クールな中に仄かな灯火。各話のラストでニヤァとなる。悩み解決の場ではなく、登山とは、その全てに自由があるのかもしれない。図書館に帰すのが惜しくなる一冊。

マカロンはマカロン 近藤史恵

第三弾は謎解きは少なくお客さまを取り巻く様々な人間関係。食べたいメニューを予約して何でも用意してくれるパ・マルに今日も人が訪れる。今回はブータンノワールやタルタル、ロティに意識が惹きつけられて、食べ物の記憶が残りすぎる笑。

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i(アイ) 西加奈子

なぜ憎悪にも似た嫌悪を抱くのか。とにかく主観、自分、自分…。自分が生きる実感を求めて実在の大量虐殺や事故死者を小説に登場させアイは存在肯定の糧にする。アイを書きたいのか、社会を書きたいのか、作者が抱く社会への想いが匂いすぎる。彼女と私は決して相容れない。

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AX アックス 伊坂幸太郎

どのページをめくっても楽しい。

「欠点を認め反省し改善を約束し相手に感謝」

…恐妻家の格言をメモりながら、殺し屋と父の二足わらじの兜の幸せ探索を追いかける。父親の貴重な記憶を覗かせてもらったような。あの時の彼の愛情と充実を想像すると、こんな風に生きたいって思う。

鎖(上) 乃南アサ

手に汗握る。登場人物に熱くなる。感情移入しすぎる自分が気持ちよく、その没入に浸りきっていた。第一作の相棒である滝沢刑事の人間味あふれる本音と、今作相棒である星野刑事の非道ぶりが対称的。柴田課長の伝説の取り調べが気になって、次作でも出てきてほしいと期待する。

鎖〈上〉 (新潮文庫)

鎖〈上〉 (新潮文庫)

 

太陽と乙女 森見登美彦

太陽と乙女/森見登美彦 #読了 作者を形作る記憶や考えを詰め込んだ宝石箱。13年間の友人の悩みや人生を吐露された気分になった。一つ一つが鮮明でどうして輝きを放てるのか。自分の記憶みたいに記憶描写が鮮やか。必見は、デビュー当時の受賞瞬間の『日記』。あとがきされた通り、ちびちび読むべき本。

 

すごい共感覚をもった文章〜

そのときは半袖のシャツでなくてはならなかった。 腕を撫でる秋の空気も切なくなるような冷たさが 気持ちよくぞくぞくしたからである。曖昧だけれども確かに身体が憶えている感触が一つ一つ自分の中に蘇るのだ。

胸打たれた文章〜

p.32 大人になるということは、自分の中にいる子供の目を、とりあえず閉じる方法を学ぶことだ。でも大抵の人は上手に自分の中にいる子供の目を開け閉めする。

この決意は残しておきたかった 〜

そして自分がかつてこんな文章は小説に使うべきものではないと考えていた文章、かっこつけたり体裁を整えたりしようと考えずにただ文章のリズムに乗り妄想を膨らまし、殊更尊大な顔をして相手から突っ込まれるのを待つ文章を使うことにした

 

 

地図のない場所で眠りたい (講談社文庫) 高野秀行 角幡唯介

地図のない場所で眠りたい #読了 早大探検部OBの対談本。amazon推薦で気になって手に取る。見据える先読みが短くて興味が先走るというこの人たちの精神的なタフさに、自分の悩みなんて矮小に見える。「探検ノンフィクションで小説より面白いものを書いてやりたい」とは…文章にかける想いが熱い。

告白 湊かなえ

外側の視点を見て嫌悪し、内側の視点を知って認識が塗り替えられる。何が真実かなんて視点次第でどうとでもなる。話の筋よりも、狂気とも正気ともつかない感情への興味が尽きず、その振れ幅の大きさに「私はこういう話が楽しくて好きなんだ」とサイコパスでドス黒い自分を再認識。

甦る殺人者: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex) 知念実希人

この一年で知念作品を13冊も読むと、さすがに犯人を当てるのは早くなる笑。それでもカラクリを追いかける安定した面白さがあって一気読み。コミカルな描写も好き。二人の信頼関係が出来て、小鳥の猛獣使いぶりが板についてきたことが少し寂しい。

鎖(下) 乃南アサ

監禁され自らが信頼できる人間関係を自問する音道刑事の数日間にじれてじれて、早く助けたい一心で駆け抜けるように読み終わった。音道響子シリーズは、突き抜けるような疾走感と、トップスピードで前しか見えなくなる没入感がある。それがとにかく爽快でたまらない。

鎖〈下〉 (新潮文庫)

鎖〈下〉 (新潮文庫)

 

 

海外ドラマはたった350の単語でできている Cozy

honto電子書籍セールで購入。確かに海外で字幕無しの映画を何度も見てると類推学習で内容はつかめてくる。海外ドラマはハードル高いなと思っていたら、北米版ジブリ、ディズニーを観るって主旨は非常に理に適ってる。 

海外ドラマはたった350の単語でできている

海外ドラマはたった350の単語でできている

 

BUTTER 柚木麻子

一皮むけば見たくないものが出てくる。どれが本当の中身だろう。男と女、己の砦、恥、群れと孤独、欲望が巧みに活かされ、料理の全貌は見えてきて、必ず自分や誰かを見つける。バターは再び固まるように、本当の自分がみっちりするように、胃もたれしない満腹で安心する。

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対岸の彼女 角田光代

群れたり廻りに合わせたり、大切な時間を過ごした相手が今も同じ思いなのか不安になることは女性ばかりじゃない。歳をとることの漠然とした怖さを滲ませて心がおだやかになる一冊。本当に必要なのは、寂しくなくなる誰かでなく、一人でいても怖くないと思わせてくれる何かだ。

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

マラソン1年生  たかぎなおこ

我が家のバイブルと言っていい。何十回も回し読みしてる。勇気、友情、努力の少年三拍子でフルマラソンまでの道のりを描く。日々前進!昨日より今日の自分!今の自分が何歳であろうとも、それを味わうことができるからマラソンは皆に人気なんだと思う。完走果たしての感想。

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