断酒してなにしてる?

39歳のクリスマスに断酒を誓いました。持て余した時間にこんなことしてるトゥルーマン・ショー

2017年5月の読了 ランニングでAudibleという流れ

夜の写本師 乾石智子

フォロワーさんお気にの本。1冊にぎゅうっと1000年凝縮。よくある万能覚醒ラノベとは一線を画す危うい強さもいい。幻想設定も面白いし、何より人間の情念が濃すぎてこの本自体が生きているよう。まさに写本師が書く魔法書。情景を頭に描ける描写力も恩田陸並かも 。

夜の写本師

夜の写本師

 

カラフル 森絵都

冒頭の説明で筋書きもテーマも予想ついちゃって…なぞる様に読んだ。自分の見え方に気を遣う、自分の見方で間違う。誰しも経験したことに懐かしくなる。私視点では「特別な何か」を探す母親の黄昏と相反するひろかの達観に心が乱されました。それすらも見え方なんですけど。

ちなみに¥28000のスニーカーってなんでしょう?

ニューバランスコードバンのようです。

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

 

ダイナー 平山夢明

幕開けは残虐、絶望の連続。戯れに弄ぶ客達。理不尽さに挫折しかける。引き込まれたのは、この世にないダイナー料理の描写、次々に訪れる客に店が身構える緊張の展開、彼女が丸腰のままで成長していく強さ。気がつくと吐き気は食欲に変わる。文庫は別展開らしい。読まねば。

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

動物園の鳥  坂木司

「檻とは考え方の枠」「通じなくてもいい。檻に帰るが手を伸ばし続けること」最終章は坂木作品の根底を語る一字一句。作中の過剰防衛の檻を見て、坂木作品はいつも自分に槍を突き付ける。抉られて自分の檻を再認識したし、檻から顔を出すようにもなれた。救いある大切な一冊。

動物園の鳥 (創元推理文庫)

動物園の鳥 (創元推理文庫)

 

掟上今日子の推薦文  西尾維新

語り手が警備員に変わるとは思わなかった。一人称の脳内語りがとにかく長い!クドい!話がつんのめって前に進まない。無理に一冊の長さに後から加筆して膨らませている?謎が気になるので「仕方ない」と思う本は初めて。好きな人は好きなのよね。

掟上今日子の推薦文 (講談社BOX)

掟上今日子の推薦文 (講談社BOX)

 

鍵のない夢を見る 辻村深月

中年が共感し易いものを…と作者紹介があったけど、本人はこれを読み返して何を思うのか…見栄張り、共依存、自分本位など自らの物差しがない人が次々に登場。痛々しさに叫びたくなる。夢を失い現実を見る世代だってことはわかるけど。初の深月作品…選択を誤りすぎ。

鍵のない夢を見る (文春文庫)

鍵のない夢を見る (文春文庫)

 

生き方 稲盛和夫

念ずれば花開く🌸うんうん「思いの強さを何度も説いたから成功した」…高名な経営者の俺様論に不穏な空気💦

35歳未満で読めば仕事に打ち込む!と洗脳されただろう。本書に社員の幸せ、育成、他人との関わり、友人、家族、近隣は無い。最後は仏門。目を背けていたと思えた。

生き方―人間として一番大切なこと

生き方―人間として一番大切なこと

 

ナーダという名の少女 角野栄子

ブラジルリオを舞台に15歳のアリコが神出鬼没のナーダに感情をぶつけながら恋に成長に。祭の喧騒にある他人の夢に入り込んでしまった?終始、自分が包まれてしまうよう。小学生のときの読書、読了感がこんな感じだった。読み応えではなくふわり温まった。

ナーダという名の少女 (角川文庫)

ナーダという名の少女 (角川文庫)

 

蜜蜂と遠雷 恩田陸

黒鏡面装丁、2段組文字を鍵盤を弾くようになでる。内外に音楽コンクールを詰め込んだ工夫は本自体が愛おしくなる。次々に主体が入れ替わる臨場感。成長、復活、覚醒、祭という私の大好物全部入り。弾きたいから聞かせたいへ。各々の成長を友人のように喜んでしまった。

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蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

雪には雪のなりたい白さがある 瀬那和章

言葉の呪縛を受け容れて前を向く4つの物語。タイトルからしても、言葉がひたすら優しい。ムーミン、お菓子、渡り鳥、植物など頬が緩む不思議な比喩に彩られていて宝石箱を見つけた気分。4人が辿り着く決心の言葉は愛しくて憶えて暗記したくなる。

雪には雪のなりたい白さがある

雪には雪のなりたい白さがある

 

和菓子のアン 坂木司

どこまでも日常目線でゆったりした話。自分で勝手に描いてた話と違ってて…うーん、山は何処?暫し放心。続きがないと納得いかない。季節の上生菓子の知識を存分に書いてあるのでそっちメインなのかなあ。上生菓子にかぶれ毎月デパ地下に行きたくなるのは間違いない。

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和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

 

ゴースト≠ノイズ 十市

くるくる裏返るコインのような青春小説。一気に読んで終点に辿り着くまで目が離せない。長い一文だけど、苦悩を巧く表現する良いクドさ。父親を形容するこの表現好き「屈辱をアルコールでふやかし責任を転嫁するために真実の乱暴な側面ばかり挙げ連ねて他人を見下す」

一度発露したらもうそれ以前の自分には戻れず症状を受け入れて死ぬまで付き合っていくしかない。

そこにいるのはただのいじけてひねくれた中年男だ。コンプレックスに打ちひしがれて人生と同じ長さの屈辱をアルコールでふやかして、あらゆる責任を添加するために真実の乱暴な側面ばかりを挙げ連ねて他人を見下している。

この描写になにか黒々しいリアリティを感じて怖い。

暗幕のゲルニカ 原田マハ

史実の間を埋める創作。ゲルニカの意味もわかる高密度の本。巻末の参考資料の多さは学術論文並で圧倒される。社会派の米国映画みたいだ。ピカソとドラの生活を活き活きと喚起させる筆力。楽園のカンヴァスの延長にあるピカソにニヤけてしまう。同作の歓喜を再燃させる。

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

 

ラストラン 角野栄子

74歳のイコさんは人生の心残りとして母の生家までバイク旅を思い立つ。角野栄子らしいファンタジーがある。嬉々としてバイク購入から始めるイコさんを想像して心が踊る。ラストランどころか、何歳でも振り返るものじゃない、物事は前にしか進まないんだ。元気もらえた。

ラスト ラン (角川文庫)

ラスト ラン (角川文庫)

 

カササギの計略 才羽楽

約束を果たすため、なし崩しで同棲生活を始める彼ら。

幾つもの挿話は一瞬で収束する。

想いの強さがあれば、良くも悪くも真実なんて関係ないんじゃないか。

想いの強さと存在の消滅の間で葛藤したヒロインの心境、読後に胸がつかえた。

清濁経て到る最後。確かに計略を超える。

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カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

お父さんのバックドロップ 中島らも

学研の学習付録で読んだ初出を憶えている。峠を過ぎたプロレスラーが父として再挑戦する話。子供の頃は、父親は生活を支える責任感がすごいと思った。本当の父は小さな事にこだわり、怖がり、背伸びする子供と大差なくて。滑稽でも逞しくて愛らしい生き物。

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)