2018年4月の読了 熱い40代の小説たち
今月もこんにちは
振り返ると40代の主人公たちが多いレパートリーです
図書館本は少なく、自分の本棚から積読解消です
圧倒的に心に残ったのは「暴力の人類史」
タイトルから本を遠ざけてしまうかもしれませんが
自分の衝動の根源を突き付ける…私にとっては物事にやさしくなれる本です
上巻は借りたものの下巻は買おうと思ってモジモジしてます
- 草原の椅子(上) 宮本輝
- 草原の椅子(下) 宮本輝
- 行かずに死ねるか! 石田ゆうすけ
- 神々の山嶺(上) 夢枕獏
- 神々の山嶺(下) 夢枕獏
- ふたご 藤崎彩織
- 火定 澤田瞳子
- 超一流の雑談力/安田正
- 氷菓 米澤穂信
- 人間は9タイプ 坪田信貴
- 彼方の友へ 伊吹有喜
- 暴力の人類史(上) スティーブン・ピンカー
- インフルエンス 近藤史恵
草原の椅子(上) 宮本輝
40代、生きるとは何?と思ったら読むべき本。そう聞いて手に入れた。ゆったりと流れる独特の日常描写が全然飽きない。この世代以降から現実視する厭世観を克明に捉えていて、頷くばかり。このまま済し崩し的に生きていいのか?充分生きたと思える修羅場を味わったか?
草原の椅子(下) 宮本輝
取引先の社長と営業部長。親友の契りを結んだ50男2人が大人たらんと生きる。著者の持論や理想の大人像が箴言とともに書かれていて、新聞連載らしく展開をぶん投げるけれど、反発も飽きも来ない。むしろ愛着が湧く。ラフマニノフ聴きながら読みたい、染み込むような物語。
行かずに死ねるか! 石田ゆうすけ
95〜01年の世界一周旅行記。断片化した7年が文庫に収まる。旅の目的は平穏な運命に逆らうこと。とりわけ、ナイロビから喜望峰まで行きづりチャリ団4人で4000kmを走る眩しい若い馬鹿さが奇跡的。でもね。どう生きても後悔の大小なんてないと思うの。
神々の山嶺(上) 夢枕獏
エベレスト初登頂者の歴史が1台のカメラで覆るかもしれない。ミステリーを孕みながら羽生の乱生を辿る。夢を捨て切れないのか、自己顕示が理由なのか自分も分からなくなる。この迫り来る恐ろしさはサスペンスでは味わえない。山嶺という迫力がのしかかってくる。
神々の山嶺(下) 夢枕獏
エベレスト単独に同行してる錯覚。匂いや音までも感じられる文章が心を捉えてやまない。生きていくことと山を登ることの目的がダブる。自分に照らして辿り着く一文「とにかく俺にとっては最初だってこと」。射程距離なんて無いんだな。迷いをほどいてくれた渾身の作品!
ふたご 藤崎彩織
自伝をモチーフにした、セカオワらしからぬ静寂と無音が漂う文字運び。色が、どうしても感じられない。共依存?…いや、自己肯定を求めて止まない自分のことを告白する、彼へ宛てた本かもしれない。もしそうなら、ファン心理を満たす後半は本当に彼女が書きたかったものかな。
火定 澤田瞳子
我が身の為だけに用いれば人の命ほど儚くむなしいものはない。自分のやりたいことをやって幸せという納得したはずの割り切りが、中世の死生観に揺らがされ胸が熱くなる。人に影響を与えることを柱に。我が身の振り方に自省する。ヒーローではなく火定入滅という流れが清々しい。
超一流の雑談力/安田正
「一文は短く。リズミカルに。音程はファかソ」。吸収できた頷き箇所はこんなとこかな。後半は具体性が失われていく。「苦手な人とは?」→「向き合うこと」とかギャグ。
それよりも。この義母からの品。高松の栗林公園の入場券が挟まれていて、ミステリーのような思い。
氷菓 米澤穂信
沢山のブラインド空間が、一瞬の閃きで種が明かされる。映画にもアニメにもなったけど小説からこんにちは。ユルい雰囲気と、この年代がのめり込む謎が何ということはなくて(むしろ大人目線では無興味)、ああ、それが学生時代だったなと、こういう形の構成が斬新に感じた。
人間は9タイプ 坪田信貴
人間カタログ。良くわかるほどに納得出来る。統率者だった私。「短期的な企画を先導するのは得意。でも長期的権力を握ると人が離れていく」…そして統率者だけ「邪悪サイド」という注意コラムがあって、思い当たるだけにゲンナリ。読むと凹む。でも天狗になる時の薬。
彼方の友へ 伊吹有喜
躍動する雑誌作りに随所で緩む口元。エンドロールたる出典を見つめて友への想いで胸いっぱいになる。丁寧に丁寧に、波津子がそうしたように、取材を重ねて想像し現代に最上を届けようとした著者。実在の「少女の友」のリレーは時をかける。実業之日本社120周年を飾る最上。
暴力の人類史(上) スティーブン・ピンカー
それは「暴力」というより「他者への働きかけ方」の変遷。かつてありえないほどに暴力は減少している。略奪、防衛、報復。あらゆる暴力の源泉と科学論証を突きつけられ、今ある自分の働きかけ方を省みる。環境1つで全て裏返る不安を感じつつ、これからの人間性の向かう先は?下巻へ
インフルエンス 近藤史恵
近藤さんはこういう…やってしまったことを認識する冷静さや、長年じっくりと自分を見つめるような主人公の感性を、負の方向のストーリーに持っていくと、行き着く先が気になりすぎて目が離せなくなる。何が出るか怖いけど、卒アルを開いて検索したくなる。
元アル中と名乗るのはどうなのよ?
先月末から本屋に並び始めたこの本。
すっごい気になって目次見たらね。
これは買うべき!と思ったけど
1点気に入らなくて買ってない
だってさ
元アル中って変じゃない?
お前向こう側に戻って清算したとか?
何言っちゃってんの?
往生際悪くない?
どうせ1杯でも飲めば止まらないだろ?
元アル中なんて私は絶対名乗らない。
今がどんな状態にあろうと
「元」なんてありえない。
酒飲みの街、赤羽の本屋で壁一面に飾られてたのには素敵すぎるけど……笑
実は非公開にしてたけどね。
下のが初めての読了ツイなんです。
Written on JAN 10th 2017
通院先の院長から「読め~」と義務付けられてました
2016年の大みそかに読了
「なだいなだ」・・・男?女?そんなレベルでしか知らなかった
この本の形式は
①ソーシャルワーカーとの対談
②ソーシャルワーカーの依存告白(といっても具体的なことには触れない)
③なだいなださんの考え方
この本のフローが不思議
おすすめした院長もちょっと不思議
ひと月くらいして③→①→②で読んでみないとわからんかも
とにかく「治らない」≒一生の付き合いを始める、その覚悟に臆しました
少なくとも、心療内科や依存、ソーシャルワーカーなど、今までの自分は
まったく関係なかった場所を垣間見ることができた最初の一冊
もう誰トク?なグダグダ記事になりました
とりあえず明日は初めてソーシャルワーカーさんに会いに行きます
上司に「明日なんで午前休?自分の体調?」聞かれて
「あらためて話します」と答え
正直、どう話せばいいのかなと云う方が気がかり
今日で断酒16日目
2018年3月の読了 苦悩してたのかも?
3月の読了を振り返ると
「苦悩してなのか?」
というくらい。
痛快な小説が欲しいわね!
- ときどき旅に出るカフェ 近藤史恵
- いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則 秀島史香
- マラソンは毎日走っても完走できない 小出義男
- 考え方 稲盛和夫
- 先生と僕 (双葉文庫) 坂木司
- 僕と先生 (双葉文庫) 坂木司
- うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 田中圭一
- 最終便に間に合えば 林真理子
- ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250 堀正岳
- 妊娠カレンダー 小川洋子
- リバース 湊かなえ
- 老いの僥倖 曽根綾子
- 百貨の魔法 村山早紀
- 銀河鉄道の父 門井慶喜
- 最後の息子 吉田修一
- 終電の神様 阿川大樹
ときどき旅に出るカフェ 近藤史恵
後戻り出来ない?まだ間に合う年頃?の瑛子が見つけた”無くてはならない”多国籍カフェ。現実にこんなカフェが近所にないかなと既に探してる。作中に漂うこの居心地の良さがあるならば、どんなに続編が続いても未知との出会いに憧れて読んじゃうだろう。
いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則 秀島史香
grooveline時代から史香が好き!タイトルが啓発本に見えるけど、ラジオDJの体験小話です。初めこそ笑顔、目線…で始まったけど、集団の会話に乗っかるために彼女なりに気をつけるてことを中盤からメモりまくり。雰囲気を作るとは彼女らしい。
- 事実はひとつ。解釈は自由。心地いい解釈を。
- 会話の糸口は「相手の身に着けているもの」。相手をみることにも通じる。
この言葉は手帳の裏表紙に書かせてもらってます!
マラソンは毎日走っても完走できない 小出義男
距離を延ばす事に徹して成行で走ってきた。練習の練習ではなく、マラソンの練習とは「脚を作ること」。監督は俺様理論は振りかさず、選手の褒め言葉で説得力を持たせ、読者の潜在能力を本人よりも信じている。人柄が伝わり元気になれる。靴代替り
マラソンは毎日走っても完走できない―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ (角川SSC新書)
- 作者: 小出義雄
- 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 新書
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考え方 稲盛和夫
世の中に名を残したい、世に評価されるような何かを成し遂げたい、それこそ人生の一大事だと思うなら方向性が一致した人達なんだろう。家族の自己犠牲は間違ってないし、仕事を家族に懇懇と聞かせ一体感をもたせたから問題なかったという文章にドン引き。仕事なきゃ空っぽだよ。
先生と僕 (双葉文庫) 坂木司
年配の先生と少年かと想像してたら、少年先生と大学生という想定外のキャスト!そして、古典ミステリにインスパイアされた日常謎解きという予想通りのほっこり。2人の休日の過ごし方が私を癒してくれる。何も考えずに流れに身を任せて安心出来る、という本も稀有だ。
僕と先生 (双葉文庫) 坂木司
定期的に坂木ワールドに浸ると心がニュートラルに戻る。手を伸ばし続けたい、人を信じたいという著者の根底は不変。「名探偵はとにかく喋る。無言の欲求はコミュニケーションの手抜きだ」「でも1度で切り捨ててしまうのは受け手の手抜きだ」そんな自然な言葉が胸に染み渡る。
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 田中圭一
認知の歪み、支えの喪失などから鬱になった著名人含む15人の体験漫画。多分そうだと思っててこの本を読みたかった。程度の差こそあれ、3年前の自分が作者と同じプロセスで被害妄想を持っておかしくなったあれは鬱だったんだろう。寝込んで休まない鬱もあると初めて知った。
最終便に間に合えば 林真理子
33年前の直木賞受賞作。女の言動の内側にある妬みと嫉妬をさらけ出し、駆け引きという背伸びをして何か憂さ晴らししたい見栄っ張りな女が次々に出てくる。その実態は、当時31の著者の年齢で想像する「恋愛」をしたいという憧れが具現したものかもしれない。
ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250 堀正岳
text expander。毎週金曜に音楽を買って新鮮な世界を呼び込む。scansnap。lynda講座。この辺が初耳だった。読んでメモって調べて。しっかり吸収させてもらった。良い本はインスタントだから情報が廃れる速度よりも循環が早い。悲しいサガかな。
妊娠カレンダー 小川洋子
静かなる狂気。なんだかよく解らない。わかった気になれない。どこに向かうのか、どこでピリオドを打つのか。それが予想できなくて私は解釈をせずに引き寄せられる。想いの曖昧さはやはり芥川賞らしい。
リバース 湊かなえ
親友だと思っているのは自分だけかもしれない。鏡に投影する彼ら自身に私自身も投影する。胸の詰まりが開放される過程の只中では脇目なんてとても無理。カタルシスを感じて綿密に練られたあそこにスコンと着地する刹那、この先は嫌だと今更気付いても、もう遅い。痛気持ちいい。
老いの僥倖 曽根綾子
これまでの曽根さんのダイジェスト大全。40,50,60の過ごしてきた持論が層をなした1冊。この1冊があればどんな境遇でも惑わず煩わず進めるんじゃないか。どれだけ人を理解出来るか。変化していく自分と人間関係を味わい、心の振れ幅を楽しむ。うん。意外と理解してるかも。
百貨の魔法 村山早紀
あなたの記憶の百貨店がそこにある。私にとっては大宮そごう。できすぎた奇跡の話だろうと、ぱあっと幸福感と懐かしさが溢れて、形が定まってきた何かに胸が温められる。創作のせかいってやっぱり楽しいものです。御伽話みたいな、話だけれど。そんなのも素敵じゃないか。
銀河鉄道の父 門井慶喜
虚栄心を持つことなく、精一杯に父であろうと、ともに成長していく政次郎。政次郎本人が綴るよりも父らしく、著者の父子像はおそらく真実よりも血が通う。自分はこんな父にはなれていない。うるさく支配することなく、不問に付すことの難しさは痛いほど思い知るばかり。
最後の息子 吉田修一
切り取られた日常に突然放り出される。あっという間に流れに捕らわれる。そこには不穏な影が見え隠れし、私の視点は、自分の過去を重ねるでもなく、登場人物への同化もせず、カメラファインダーのように付かず離れず追いかける。全てを見透かす透明感が印象的。気持ちいい。
終電の神様 阿川大樹
熟練の文章力を感じる、と思って調べたら還暦を超えた作者。各キャラの設定が様々で、引き出しの多さを伺わせる。短編どうしを明確に結ばないのは別にいい。盛り上がらなくてもいい。表紙、題名、中身がちぐはぐな点だけ、出版元さんの演出だけ突っ走った感が否めず気の毒。